
OETR連携研究グループ事務局
東京大学生産技術研究所 北澤研究室
153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1
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沿岸都市再生への試み──陸と海を隔てた従来の発想を超えて
明治三陸大津波(1896)、昭和三陸津波(1933)、チリ地震津波(1960)に続いて、東北地方太平洋沖地震においてまたも津波が三陸を襲った。巨大防潮堤を乗り越え、沿岸都市・集落に壊滅的打撃を与えるさまは、陸と海を隔てた従来の発想を超えなければ、新しい沿岸地域の復興再生の姿は描けないことを強烈に印象づけた。さらに、福島第一原子力発電所事故は、狭い国土に54基もの原子力発電所を抱える危うさについて考える契機となった。
わが国は海に囲まれた世界屈指の海洋国家であるが、これまでこの広大な海洋空間がうまく利用されておらず、日本の総発電設備容量を大きく上回る膨大なポテンシャルをもつ海洋自然エネルギー(風力、波力、潮力など)の利用についても十分な配慮がなされなかった。
本研究は、沿岸都市再生に「海洋空間と海洋自然エネルギーをいかに利用するか」という視点によって、津波防災に強い、低炭素型の都市、地域のあり方を示そうとするものである。
再生可能エネルギーは陸から海へ、沿岸から沖合いへ
日本における稼働中もしくは各地において研究が進んでいる洋上風力発電および波力発電の事例はすでにいくつかある。
洋上風車の可採風力エネルギー量は水深200m以下の沿岸域で613GWと、日本の全発電設備容量の約3倍にのぼる。また、波力エネルギーについては原発166基分と、その可採ポテンシャルは大変高い。
その一方で、地代、騒音、景観、バードストライクなど、陸上における風力発電の制約が洋上には存在しない。経済活動、観光・文化、教育など、さまざまな人間活動と環境保全が融合する海洋から、世界の模範になる総合的沿岸域管理・海洋空間計画を立案し、東北の再生、日本の再生につなげてゆく。
復興再生のための海洋エネルギー利用
東北の沿岸域には水深200m以下の比較的平坦な海底が広がっており、沖合での海洋エネルギー利用に理想的な海域のひとつといえる。海岸線約100kmにわたりアジア−太平洋地域最大の海洋エネルギー利用特別海区を設定し、近い将来、わが国原子力発電の相当量を再生可能エネルギーに置き換える出発点とする。
復興再生から国際競争力を確立し、グリーン電力による地産地消、および地産都消(300万kW)を図る。
海洋エネルギー実証実験サイトの創設
スペイン、フランス、イギリス、スコットランド、デンマークにおいてはすでに海洋エネルギーに関する大規模な実証実験が行なわれ、なかでもスコットランドのオークニー諸島に設置されたEuropean Marine Energy Centre(EMEC)が先進的な実験サイトとして世界的に知られている。この海域は、大西洋の大波とスコットランドの諸島間に存在する潮流を利用できることから、波力発電と潮流発電の実証実験が可能となっている。
こうした事例に倣い三陸沿岸地域での海洋エネルギー実証実験サイトの創設を目指す。
漁業+水産業とのシナジー──大規模沖合い養殖の可能性
世界の人口増加や食生活の変化により水産物消費量の増大するなか、海面漁業は1980年代後半から頭打ちの状態が続いている。その一方で養殖業は大きく発展し、今後もこの傾向は続くとされている。沖合い養殖は主に係留やO&Mが高コストのため、沿岸養殖に比べ高価になってしまうというジレンマがあるが、洋上風力発電の施設やインフラを利用することで、大規模沖合い養殖の実現可能性を探ってゆく。
沿岸部の地域再生とまちづくり──リスボンに学ぶ復興計画
ポルトガルの首都リスボンは1755年の震災とその後の大津波によって死者6万人という壊滅的な被害を受けた。しかし、その後50年以上にわたる復興計画により、中心市街は新たな都市基盤を整備し、その後の繁栄の基礎が生まれることとなった。
リスボン復興の歴史に学び、さらにはエネルギーフローの上流から下流までを考慮した、低炭素型の都市デザインを提案する。
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© Ocean Energy for Tohoku Regeneration 2012 |
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