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海洋エネルギー学と都市再生学の出会い

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2013年2月に刊行された、
第1から第3回までの
OETRシンポジウムの成果をまとめた
報告書『美しく力づよい東北復興』より




沿岸都市再生の一環としてあるべき海洋エネルギー

昨年(2011)のあの日あの時間、東京日本橋にある三井造船本社ビル内で打合せ中であった。最初の地震で室内は轟音に包まれ激しい揺れに襲われた。大きな余震が何度も続いた。震源は関東ではなく、三陸沖と報道された。津波で流される家々の映像を目にし、震源に近い東北沿岸地域はたいへんなことになっていることがわかった。翌日からは、福島第一原子力発電所のいわゆる「想定外」とされた全電源喪失状態が続き原子力災害は刻々と悪化していった。幾日経ってからか、あちらこちらで支援活動が始まった。「海洋エネルギーは震災復興にどのように役に立つのだろうか」と考える日々が続いた。
そして6月3日、この日は年に一度、生産技術研究所(生研)の一般公開日であった。生研2階の廊下を通りがかると、数枚の展示パネルが目についた。中世ヨーロッパの銅版画に解説が加えられている。誘われて太田研ラウンジという怪しげな部屋に入ると、そこに太田浩史先生がいらっしゃり、沿岸都市再生研究や、1755年リスボン地震についてお話を伺うことができた。地震及び津波と火災によって灰燼に帰したリスボンは、人々の英智で大いに復興した。「地震学」が生まれたのもその時であった。いまのリスボンは、世界遺産ジェロニモス修道院はじめ多くの文化遺産が点在し、大西洋を望む美しい沿岸都市である。250年前にこうした大惨事があったことを知らなかった無知を恥じ入ると同時に、東北の震災復興もかくありたし、このため、海洋エネルギーはそれだけで震災復興に貢献できるわけではなく、沿岸都市再生の一環として捉え直すことによってこそ意義がはっきりしてくるのではないかと直感した。この時から、太田浩史=建築家と海洋エネルギーのコラボレーションが始まった。この絆は、後々、昨年11月1日の第1回OETRシンポジウムでの前田尚武氏(森美術館)「メタボリズムの未来都市、海洋都市計画」や今回の第2回OETRシンポジウムでの伊東豊雄氏、伊藤香織氏との出会いにつながり、巡って、海洋エネルギーの意義を高めていると言ってよいだろう。[黒崎明]

新しい港湾都市

数々の国内外の都市再生事例を訪れているが、おしなべておもしろいのが港湾都市である。それには理由があり、①港湾地区や工場地区などがかつての機能を失ったため、文化施設やツーリズム施設など、新産業のための用地転換がなされている、②前述の理由のために、港と都市の間にあった道路を撤去・埋設するなど、アクセシビリティを向上する施策がなされている、③古い倉庫のリノベーションやアイコニックな現代建築など、新しい空間の創造が行なわれている、などである。都市で言えばジェノバ(イタリア)、ニューカッスル/ゲーツヘッド(イギリス)、コペンハーゲン(デンマーク)、ヨーテボリ(スウェーデン)、ナント(フランス)、ビルバオ(スペイン)、アムステルダム(オランダ)、ハンブルグ(ドイツ)など、かつては海事で名を馳せ、しかし港湾地区の衰退に直面した都市が、競うように港と中心市街の再編を行なっている。
リスボンを訪れたのは2011年2月のこと。地中海で急成長を遂げているクルーズ産業がリスボンの港湾再生にどのような影響を与えているかを調査するためだった。1755年にリスボンをヨーロッパ最大の津波が襲い、それが中心市街の整然とした街並みをもたらしたことは知っていたものの、それと同じ災害がその1カ月後に日本で起きるとは思いもよらなかった。港湾都市という研究テーマを「防災」と「復興」という視点から改めて捉え直すことになったしだいである。
OETRでの連携研究は、産業構造や人口構成という変化要因により、都市再生が以前より必要とされていた東北の港湾都市に、海洋からの視点、とくにエネルギー創造という視点をもたらすものであった。これは日本の都市再生において最も先鋭的な問題群であり、構想力や実行力において、工学の可能性が深く問われている分野である。そのために必要とされているのは、海洋工学と都市計画を横断する知見なのであるが、活動を通して明らかになりつつあるのは、従来は分け隔てられていたこの二つの分野が共通性をもっているということである。そのひとつは、計画を実行するまでの時間がたいへん長く、空間的スケールも同様にとても大きいこと、そしてもうひとつは、例えば造船の進水式のように、計画の実現をみなで祝い、デリバリーする文化があることだと思われる。このようなOETRの体制をもって東北復興に力が尽くすことができたとすれば、建築家としても研究者としても、ほかに代え難い機会であると考えている。[太田浩史]

くろさき・あきら=東京大学生産技術研究所特任教授
おおた・ひろし=東京大学生産技術研究所講師

 

 

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line oetr@iis.u-tokyo.ac.jp line © Ocean Energy for Tohoku Regeneration 2012  

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